歴史好きだった私が、中国文学・思想を専攻に選んだワケ敬仲
模擬授業「道教はいつ成立したか?」
さて、共通テストもまもなくという時候となりました。
(いちおう当チャンネル視聴者の1~2割はこれから大学、という世代です)
そうした若い「歴史好き」のみなさんの参考に、私の進路選びのことを述べたいと思います。
「世界史」をうたっているチャンネルですが、私は中国学(文学・思想哲学)を専攻としています。
(「中国史」は「中国学」含まれることもありますが、ここでは別個とします)
1月7日に挙げた動画も、
中国思想及び、その隣接分野である日本思想・仏教・神道を取り上げたものです。
しかし、中高生の頃の私は「歴史好き」であり、史学を専攻するつもりだったのです。
オープンキャンパスの思い出
「中国学の方がいいかも」と思ったキッカケは
高校二年時のオープンキャンパスで受けた「道教はいつ成立したか?」というテーマの模擬授業でした。
(以下、記憶だけでなく、現時点の学問的知識に基づきます)
先生が受講者に問いかけ、私を含む3名が回答します。
①私は「老子」②ある者は「後漢」
③またある者は「3~4世紀」
先生はどれも「正解」とおっしゃいました。
①老子
道家(老荘)思想は黄帝・老子を開祖と称して、漢代には「黄老」とよく併記されます。
(黄帝はもちろん、老子も実在があやしいですが)
そして道教においてこの両者は開祖のような位置づけとなっています。
道教側の主張として「道教が老子にはじまる」から、私の「老子」という回答を正解としてくださいました。
しかし、歴史的にいえばこれは事実とは異なります。
道家思想も道教もどちらも「Taoism(タオイズム)」ですが、道教は道家思想とは区別します。
②後漢
道教は道家の延長線上にあるのは間違いなく、老子及び書物『老子』を重んじますが、
不老不死を目指す神仙説や陰陽五行に道家思想が混ざって宗教性・神秘主義色が濃くなっています。
そのために道家の哲学とははっきり区別されます。
厳密な正解とは「②後漢」です。最初の道教教団といえるのは、『三国志演義』でもおなじみの太平道と五斗米道です。
③3~4世紀
しかし、同じく後漢に中国に伝来した仏教、「国教」として地位を確立した儒教とくらべると稚拙な存在でした。
仏教教団を参考に教団組織をつくり、これらと「三教」として肩を並べさせたのは、北魏の寇謙之です。よって先生は「③3~4世紀」も正解とされました。
(「確立」だったら寇謙之で間違いないですね)
この模擬授業は、複数の大学で聞いた歴史学よりも遙かに面白く感じました。
いざ受験という時、史学科も受けましたが、中国文学とか、東洋哲学とかいうような名前の学科も受け、
結果、中国学の道を歩んでいくこととなりました。
難しい学科選び
「中国史好き」の方には『史記』ファン、「三国志」ファンが結構いると思いますが、
歴史学よりも中国文学を専攻にした方が幸せだったろうなという人をたまに見かけます。(その逆もしかり)
「史学」「文学」「哲学」は隣接領域であり、ある程度はどうにかなりますが
最初に学ぶのは、その分野の概説です。「イメージしてたもの、やりたかったことと違う」ということはめずらしくありません。
(文学研究者が歴史について書いたり、歴史学者が思想について語ったりなんてよくあるので、本当にどうにかなるのですが、最初に興味持てないと続けるのは難しい思います)
選ぶ前に本を読もう!
今年受験生、これからが正念場ですね。見事複数の学科に合格されたとして、「そのまま第一志望を選ぶ」前にちょっと待った!
学問領域が異なるなら、決める前にその学問に関係する新書本を数冊読んでみてください。
「イメージと違った」「こっちの学科の方が面白そうだ」ということが十分あり得ます。
来年以後受験生という方も、オープンキャンパスの模擬授業もいいですが、ついで担当教員にお勧め本を聞いてみてください。
転学・転学の制度もありますが、面倒ですからね。
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