何もしてないのに機動部隊が壊れました。 1942年6月5日、日本海軍はミッドウェー海戦において空母四隻を失う大敗北をしました。 この敗因は、米軍が暗号を解読したことによる待ち伏せだったのですが、日本海軍は「攻勢に使える手札が大きく減った事」と「米空母部隊を撃破しない限り作戦行動が不可能になる」という点で大きな衝撃を受けていました。 なにせ、本海戦も前のポートモレスビー攻略作戦も米空母部隊の反撃により頓挫しており、これを撃破してしまえばそもそも待ち伏せを受けることもないという考えに至ります。 この時点では、後年に言われるような「攻勢から守勢に変わった転換点」と日本軍は考えておらず、あくまで「攻勢」を諦めていなかったのです。 その為、以後の日本海軍は「待ち伏せする米空母部隊の排除」を念頭に置いた対空母戦に特化した艦隊編成や搭載編成へと変わっていくのです。 さぁ、空母を緊急で増産しませう。 ミッドウェーでの敗戦で海軍は空母の緊急増勢計画を研究し、⑤計画等既定の軍備計画修正の中に含められることになり『戦艦、超甲巡の建造は全て取りやめ、航空母艦の建造を優先する。軽巡洋艦の建造隻数を減少し、駆逐艦、潜水艦、掃海艇、海防艦、駆潜艇の建造を大幅に増加する。』という内容の改⑤計画に改められていきます。 この改⑤計画で新造される空母は 5021号艦(改大鳳型)5隻 302号・改302号艦(雲龍型)13隻 となっていました。 ですが、空母の新規建造は最低でも2年の年月を必要とし、今すぐに空母が欲しい現状では即効性に欠けました。 それらに対し、比較的短期間で戦力化が望めそうだったのが使い道のなくなった水上機母艦・甲標的母艦を軽空母に改装することと、艦爆による先制攻撃の母艦として低速戦艦を改装することでした。 軽空母は、当時すでに飛行甲板の狭さから現行の機体を運用するのがやっとであり、次期新鋭機(彗星や天山など)の運用は困難なのは火を見るよりも明らかだったのですが、上層部は現状の対空母戦に対処できればいいと考えていたのだと思われます。 まぁ、その結果、軽空母が空母部隊に増えていくことで現地部隊は扱いに困ることになるのですが、それはまた別のお話。 さらに言うと、使い道がないと思われていた甲標的母艦が、直後のガダルカナル島輸送作戦で一番必要とされていた高速輸送艦の要件を満たしており、投入の機会を空母改装により逸したのもまた別のお話。 さぁ、ある物で機動部隊を再編しませう。 1942年6月12日に軍令部に出頭した源田実中佐はミッドウェー海戦の戦訓も取り入れた空母部隊再建案を提出します。 その内容は、一個航空戦隊の空母を大型空母2、小型空母1とし艦戦、艦爆の搭載数を増加させ代わりに艦攻減らすというものでした。 小型空母は主に艦隊の防御を担当し、大型空母を攻撃に専念させることを目的としており、空母の絶対数が不足している現状で使い道の限られている二線任務に割り当てられていた小型空母を艦隊で活用させようとしたのです。 また艦爆の増加は1939年頃の編成にあった機動航空隊の任務である敵機動部隊を先制攻撃し、飛行甲板を爆撃によって使用不能にするという方針に回帰した物でした。 また、戦前の艦隊決戦構想の最終目標であった米戦艦部隊の撃破は開戦劈頭の真珠湾攻撃により達成されており、日本の戦艦部隊はこの時にはすでにその存在意義を失いつつありました。また、艦隊決戦構想では空母部隊、巡洋艦部隊が前衛として進出し、決戦の障害となる米空母部隊を撃破した後に戦艦部隊同士の決戦に臨むといった方針でしたが、ミッドウェーではそれが逆に仇となり、航空決戦に敗れ制空権を喪失したために連合艦隊は戦艦などの有力な戦力を持ちながら撤退を余儀なくされただけでなく、その後の敵航空部隊の追撃に苦しみました。 その結果、当然の帰結ではありますが艦隊決戦のメインとなった対空母戦の艦隊編成として、巡洋艦部隊を進出させ、その後方に空母部隊を配置して米空母部隊を攻撃するという編成になり、たとえ先制攻撃を受けたとしても米空母艦載機の攻撃は前衛で吸収し、その間に後方の空母部隊の攻撃隊が米空母を叩くという構想になっていきます。 そして「艦隊決戦の主力艦隊」であった第一艦隊は解体が進み、伊勢、扶桑型の戦艦四隻は航空戦艦への改装が検討され、艦隊決戦の秘密兵器であった重雷装巡洋艦の大井と北上は南西方面艦隊への輸送作戦用として転出していくことになります。 こうして、戦前に日本海軍が夢見た「大艦巨砲主義による艦隊決戦構想」はここに崩壊したのでした。 そしてこの「航空機主体による艦隊決戦構想」がそのような結果を迎えたのかは次にお話することにしましょう。
Category: 雑記
フロリダ旅行の備忘録
はい皆様ここではお久しぶりです。 新型コロナの流行も一段落はして、最近海外旅行に関する広告や案内が増えてきた気がします。 しかしまだまだ自由に旅行できる雰囲気ではない上、私自身としても年一で海外旅行ができた自由な身分ではなくなってしまったため、やはり今回も過去を懐かしみながらブログを書いていこうと思います。 今回紹介していくのはアメリカのフロリダ旅行の様子です。 フロリダには何がある? なにがあるでしょう。正解はディズニーランド。 ディズニーランドと言えば我々日本人には東京ディズニーリゾートが定番ですが、本場アメリカのフロリダにあるディズニーランドは何もかも桁違いです。 まず広さが110平方キロメートルあります。日本のは0.465平方キロメートルなので本当に桁違いです。その差は200倍以上! 私は一週間フルで回りましたが、半分も回りきれませんでした。おそらく隅から隅まで全制覇するには一ヶ月いるんじゃないかな。 しかしながら一週間しか猶予がない中で、私も面白そうなスポットを厳選して臨みました。 今回はその中でも特に面白かったアトラクションを3つご紹介します。 ロックンローラー・コースター エアロスミスの音楽に合わせて暗い空間をハイスピードで駆け抜けるジェットコースタータイプのアトラクション。(wikipediaより引用) スペース・マウンテンなどと異なり方向転換が少なくスイスイと大回転してくれるので色んな意味でノリやすかったです。 ディズニーパークで最もハードなアトラクションとの評価もありますが、恐怖感は少なく楽しいコースターだと思います。 エクスペディション・エベレスト 2つ目は通称エベレスト、これも絶叫系。名前の通りエベレストを模したコースを駆け抜けるアトラクションとなっています。 最初の上りのコースが長く、途中で線路がなくなったと思えば後ろ向きに超スピードで下るので良い意味で恐怖感満載のコースターでした。 ストーリーもタワー・オブ・テラー並に結構作り込まれていて、没入感もあるクオリティの高いアトラクションとなっていると思います。 ディズニーパークで最も高いアトラクションと言われており、山頂の高さは60.8mあります。 テスト・トラック 最後はテストトラック、名前の通りテスト用の自動車型のアトラクションに乗り、様々なテストを行っていきます。 そして最後には走行テストが待っており、これが最高時速105kmとディズニーパークで最も速いアトラクションとなっています。 ビッグサンダーマウンテンのように外を高速で駆け抜けるコースターなので、爽快感が最もあるアトラクションなんじゃないかな。 いずれのアトラクションも日本にはありませんが、Youtubeで検索すれば乗ってみた動画があがっているので気になる人は一度見てみてほしいです。 また、日本のディズニーランドのアトラクションで、私の中で評価が一番高いのはスペース・マウンテンですが、どうやら2027年までリニューアル工事で閉鎖されるみたいですね。 果たしてどんなアトラクションに進化するのか楽しみです。4年後か……。 そんなわけで今回はここまで、また機会があればお会いしましょう、ではでは~。
アメリカの裁判所について
お久しぶりです。せるヴぁんだです。今回のブログ担当ということで、「アメリカの裁判所」について徒然なるままに書き散らしたいと思います。 アメリカ「合衆国」というちょっと変わった国 The United States of America, 略してU.S.A。一昔前(?) に同タイトルの曲が流行りましたが、日本人としてよくよく考えてみれば、アメリカという国は奇妙な国家形態をしています。日本の場合、「国」と言えば日本国そのもの、その下の行政単位は県、市、区、群、町…というように刻まれていきます。(道州制万歳!) 一方のアメリカは、いわゆる連邦制国家なのです。2023年現在、全部で50州を抱える国ですが、この「州」という存在がいささか厄介なのです。おそらく、多くの人が州=県のようなイメージを持つのではないでしょうか。愛知県豊田市≒ミシガン州デトロイト市のように。 しかし、実際のところ、アメリカの各州は日本の都道府県よりもはるかに強い権限を持っています。なんたって「州の憲法」が作れてしまうのですから。(おまけに州兵という州知事直轄の軍事組織まで!そう、某Grand Theft Autoなゲームで手配度が最高になるとやってくる人たちですね)このため、アメリカという国には、連邦政府たる「アメリカ合衆国政府・議会・司法」と、小さな国家とも呼ぶべき、「州政府・議会・司法」が二重で存在しているのです。日本の地方自治体にもそれぞれ議会と行政は存在し、条例も制定できますが、さすがに憲法や法律(※1)は作れません。国の唯一の立法機関は国会のみと憲法で定められています。(第41条) ※1…多数ある「法」の中でも国会で制定された法を特に「法律」と呼びます。 一番の違いは「裁判所」の構造かも アメリカと日本は「三権分立」型の構造をしています。議会(立法)・行政・司法の三すくみですね。そのなかで、議会と行政については、上に見た通り、権限の強弱があるとはいえ、ある程度は似通っています。しかし、司法たる裁判所はまったく違う構造をとっています(なぜでしょうね?)この違いの原因を探るところまではパワーがないのですが(すみません。。。)ここでは組織構造の違いを簡単に紹介しようと思います。 1.日本 日本の場合、司法制度の頂点たる最高裁判所が1つあり、日本を八つの管区に分けて高等裁判所が設置されています。その下に第一審となる地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所がたくさん存在することになります。このように、最高裁をトップとする単一ピラミッド構造が日本型司法制度ですね。 2.アメリカ アメリカはというと、裁判所も「連邦政府」と「州政府」の2つのピラミッド構造を取ります。アメリカの統治システムは原則として州政府が責任を負い、州政府ではできないことや特に必要とされる場合に、連邦政府に権限があるようになっています。たとえば、合衆国憲法の解釈・適用に関する問題は、州の裁判所ではなく連邦裁判所が審理する権限(管轄権)を持っています。このように、連邦裁判所が管轄権を持つのか・連邦と州いずれの裁判所にも管轄権があるのかなど、個々の訴訟問題の性質によって、どこで裁判するのかが決まります。連邦と州を比べると、連邦の方が力があり、上下関係があるようにも思えますが、州の裁判所システムが連邦の裁判所システムに従属しているようなことはありません。あくまでも「異なる別の裁判所システム」としてそれぞれ独立しており、管轄権の競合があった場合にのみ、個別に調整されています。(たいていは連邦法が優先します) A)州裁判所システム アメリカで提起される訴訟のほぼすべては、州裁判所へと持ち込まれます。州の裁判所システムは各州によって様々であり、特に統一されているわけではありません。基本的には州地方裁判所(District Court/Trial Court)・州控訴裁判所(Court of Appeals/Appellate Court)・州最高裁判所(Supreme Court)の三審制ですが、州によっては控訴裁判所がなく、第一審と最高裁判所の二審制を採る州も存在します。(デラウェア州、サウスダコタ州、ワシントンD.C.など) さらに、州によって憲法や法律の内容、蓄えられた経験(先例となる判例法)も違うため、同一の訴訟を別々の州で提起すると、必ずしも同じ結論や量刑にならない可能性もあります。有名な話では、国際的な企業が準拠法と管轄裁判所(※2)を選ぶ際、アメリカではニューヨーク州とデラウェア州が多いそうです。(デラウェア州なんて何もないのに!)これは、2州が企業紛争に関する豊富な先例を蓄えているからと言われています。 ※2…事件・紛争が起きた時、どの国・州の法律に基づいてどこの裁判所で審理するかということ。 また、アメリカ裁判所制度の最大の特徴と言ってよいのが、「巡回裁判所(Circuit Court)」の存在です。巡回裁判所はその名の通り、管轄する地区をぐるぐると巡回して移動式の裁判をしていたのです。残念ながら今はもう存在しませんが、馬に簡易的な審理台を引かせて、判事が裁判をして回っていたそうですよ。(当時は上等なクッションもなかったので、長時間の移動と審理で判事のお尻が破壊されたとの説も) (画像引用:HJ Erasmus, Circuit courts in the Cape Colony during the nineteenth century: hazards and achievements,Fundamina… Continue reading アメリカの裁判所について
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重い本が読めなかったので、軽い本をご紹介します。 フランスの文豪、バルザックによる「役人の生理学」。なお、私は文学好きではないので、バルザック作品など初めて読んでいます。なぜ読んだか?行財政史が好きだからですかね… 本書が書かれたのはバルザックにとっては晩年に差し掛かる1841年、7月王政期のフランスでした。当時のフランスといえば産業革命の時代ともいえます。王政といえども、1830年憲法下の立憲君主制であり、貴族制や世襲制が廃止され、直接税200フラン以上の制限選挙(有権者は全人口の1%に満たない)が実施されており、当時としては民主的な社会が始まっていました。そんな社会の縁の下の力持ちが大量の事務を公正に実施する役人たちです。住民登録、都市計画、公金の管理、公共事業の実施。どれをとっても民営化などしたら公共サービスが平等に国民にされず、誰もが平等なはずである民主的な社会の基盤が揺らぎます。今なお私たちを支える黒子たちですが、まぁ、評判が悪いところでは悪いものです。税金泥棒、仕事が遅くて融通が効かない、どうでもよさそうな細かいところばかり気にする、挙げ句の果てにはそう言った仕事のやり方をお役所仕事などと…。そんな悪評は今に始まったことではありません。バルザックの時代も同じ。いえ、むしろバルザックの時代ぐらいに始まったそうです。 以前の時代、第一帝政時代ですが、その当時のことをバルザックは皮肉を込めて懐古的に語ります。 「役人ほど素敵な商売はないといわれた時代があったことを知ってはいる。」 バルザックによれば、当時の役人は最高級の社交界にも出られたし、メチャメチャモテたそうです。というのも皇后など君主の一族が贔屓にしていた役人たちがいたからだそうで、役人の公共性というものがまだ確立していなかったからなのです。それが7月王制の立憲君主制により、信賞必罰をわきまえた君主から、忘恩の大衆に仕えることになり、閑職は攻撃対象となり、その栄華は終わりを迎えたのでした。 7月王政下で役人は事務室に拘束され、自由に立ち去る権利はなく、出世していないものは良いとは言えない賃金で働き続けました。バルザックがとりわけ注目したのはパリの中央官庁に勤める役人でした。今と変わらないじゃないかと思うものがある一方で、細かいところを見ていくと、現代(日本)との違いが浮き出てきます。19世紀のパリにはパソコンはおろか転写機もありません。謄本係という、今ならプリンターで十分代用可能な役職がありました。電子化されたデータもないので、今なら職員の誰かがちょっと兼任すれば済む文書管理責任者が整理係として独立した集団に。縁故採用が根強く、強力な後ろ盾があれば出世できるが、そうでなければ相当な忍耐力や適応能力が必要、などなど。 また、現代日本では見られない雇用形態も興味深いものです。それが試補→書記→課長補佐と続くもので、フランスでは1940年代まで続きました。試補(原文ではsurnumeraire、定員外の職員と言った意味のようです)とは正式な役人ではなく無給の見習いで、実家が太くない者は大変苦労したようです。戦前日本にも同名のもの(翻訳の都合でしょうが)があった制度で、明治20年勅令第37号において定められた「文官試験試補及見習規則」にあります。公立大学か試補試験合格者が役人になると最初に通る道でした。フランスにおいての採用基準の細かいところはバルザックは書いていません。もとよりこの本は役人の実態を詳細に記録するものではなく「こういう奴いるよな」と共感を誘い、一時の娯楽にするためのものなのですから。 そしてこのエッセーの真髄は、行動様式ごとに分けた役人分類で、ごますりだとか蒐集家(オタク)だとか商人だとかに分けています。スプラトゥーンのオオモノシャケみたいで面白いです。この中には大っぴらに副業が許されていた当時の役人事情を反映しているものもあります。その副業の程度は人により様々で、劇作家や小説家(三島由紀夫は大蔵省出身でしたね)、会社役員、演奏家、妻側の内職や店舗経営などなど。当時の役人生活はその薄給から副業せざるを得ず、バルザックはそのことで、国家が役人から俸給を奪い、役人が国家から時間を盗むと嘆いています。または、ロスチャイルド銀行の職員の待遇と比較し、あまりにも無駄があると。講談社学術文庫版では付録がついており、その中の『役人』というエッセイではフランス政府に対する改革案が載せられ、役人にはしっかり給料を支払い、人数を減らしてしっかり働かせるべきだと論じています。 バルザックの視点を離れ、山川出版社の世界歴史体系を見れば、高官は貴族やブルジョワに切望されたポストで、高い俸給にありつけば大ブルジョワ並みの生活となったそうです。昇進や指名の基準はあいまいなため、縁故採用、官職売買の慣行も続いたようです。そして積もり積もった不満はやがて1846年の凶作に端を発した不況、高学歴ワーキングプア、有望な王位継承者の不足から二月革命を招いたそうですが、それは本書の原書の最初の出版の後の話です。
海軍と炭酸飲料のこばなし
海軍さんの嗜好品 戦争において士気などを維持するのに嗜好品は貴重なものでした。なにせ、やる気がない中仕事をしてもなかなか捗らないように、士気が低いと兵士も弱くなるのです。 第一次世界大戦でもフランス軍は、兵士1人につき毎日4分の3リットル(通常のワインの瓶1本に相当)のワインを無料で支給し、イギリス軍も一日一口程度のラム酒を支給して士気の維持に努めたほど。 第二次世界大戦では救国戦闘機のスピットファイアがフランスにいるイギリス軍の為に落下タンクにビールを詰めたり、仕事熱心な米軍のおにいさんが最前線の小島にアイスクリーム製造機を配備したりと……これらは「兵士を甘やかすため」ではなく「効率よく兵士のやる気を出させるため」に用意されたのです。 WWIでガリポリに上陸したフランス軍のワイン そういう意味では、昨今のミリタリーオタクの皆さんが小馬鹿にしがちであるイギリス軍の現代戦車に搭載されている電気式湯沸し器も士気の維持という点では侮れない装備です。敵の砲爆撃の嵐の中でも安全な装甲に包まれた戦車の中で火をたかずに暖かい食事や飲み物が楽しめたり、布の消毒ができたりするのです。皆さんだって冷たいコンビニ弁当ばっかりだと少しは暖かいものが恋しくなるでしょう?それが安全にできるのですごいんですよ。 とてもつおいイギリス軍の湯沸かし器 ……っと少し話がそれてしまいましたね。 それでは士気向上の嗜好品を大日本帝国の海軍さんはどうやっていたのかというと、甘いものでやる気を出させていました。 泊地などではかの有名な給糧艦間宮の間宮羊羹などの甘味の補給が有名ですが、巡洋艦以上の大型艦には自分たちでそう言ったものを作る手段がありました。 それが「ラムネ製造機」です! 海軍艦艇には、火災の時に火を消すために「二酸化炭素消火装置」というものが備え付けてあり、それを転用して「ラムネ製造機」というものを設置したのです。 この装備の設置については戦前からであり、昭和三年の「艦舷「ラムネ」製造機装備の件」という訓令が出されており、横鎮、呉鎮、佐鎮長官あて(舞鎮がないのは、当時軍縮条約により要港部に格下げされていたため)に海軍省大臣官房から 『其府麾下所属ノ既成戦艦、巡洋戦艦、巡洋艦、航空母艦、潜水母艦、給糧艦及其他必要ヲ認メタル艦舷ニシテ「ラムネ」製造機ヲ有セサルモノニアリテハ此際艤装品トシテ装備方取計フベシ 右訓令ス(後略)』 とあり、要約しますと 「横須賀、呉、佐世保の各鎮守府長官は、自分の部下所属で竣工済みの戦艦、巡洋戦艦、巡洋艦、航空母艦、潜水母艦、給糧艦そのほか必要な艦船でラムネ製造機を取り付けていない艦があるのならば、この機会にすべて取りつけるように」 というものになります。ここで駆逐艦や潜水艦等がないのは、ラムネ製造機を設置するにはスペースなどの制約があるからなのでしょうかね?実際に駆逐艦島風や駆逐艦山雲といった艦にはラムネ製造機は設置されていなかったという記述を見たことがあるのでそういう事なのでしょう。 ちなみに火を消すための炭酸ですので、そう無闇に使う事もできません。なので停泊時は「ボンベに入った炭酸ガスを陸上から買って製造」していたそうです。 なおその頃、仕事熱心な米軍さんは大型艦にアイスクリーム製造機を導入しており、米空母艦載機が不時着した際に駆逐艦などがパイロットを回収して引き渡せば、お礼にパイロットの体重分のアイスが貰えたそうな……やっぱり格が違うなぁ……
この「コード」を額に入れて飾りたい
はじめに 近況報告になりますが、サムネイル制作者兼HP管理者だったましろさんが退会されたことで、私が今年の4月からましろさんのポジションにそのままスライドする形になりました。ですので、4月1日の「紫電改パート2」の動画からサムネイル制作を担当しています。最初は全く使い方が分からなかった「Adobe Illustrator」ですが、最近はある程度基本的なことはわかったような気がします。ましろさんからいただいたテンプレートを元に、毎回楽しくサムネイルを作っています。 Golang 最近はプログラミング言語のGoにハマっていて、Javaから浮気しそうな感じです。言語としては、Javaよりは若干レベルが低い感じがしました。ポインタの概念がある程度には低レベルですね。Javaより低レベルですけど、勉強の難しさはJavaより高い感じがします。Java8のドキュメントは日本語で転がっていますし、Javaの解説ブログ、動画の類いもたくさんあります。しかし、Goのドキュメントは多分英語しかないので、標準ライブラリの仕様を見に行く時に若干めんどくさいのです。まあ、日本語の解説ブログが全くないわけではないので、色々探してみると参考になるものがたくさんあったりします。 ・Java8のドキュメント(日本語) https://docs.oracle.com/javase/jp/8/docs/api/overview-summary.html ・Goのドキュメント(英語) https://go.dev このブログを書いている10日くらい前から勉強を始めましたが、色々な方法で勉強しています。大学の課題を捌きつつ別のこともやっているので牛の歩みですが、主に下記の2種類の方法をやっています。 ・「A tour of Go」をすすめてみる。 ・競プロ(「AtCoder」とか「Paiza」)をやってみる。 「A tour of Go」 日本語で書かれたGo言語のチュートリアルです。ブラウザ上で記述して実行して結果が得られるので、実行環境をインストールしなくても使えるというのが利点でしょうか。現時点で、大体半分くらいやりました。 https://go-tour-jp.appspot.com/welcome/1 競プロ 以前Javaで書いたものをGoで書き直すとか、普通に新しい問題をやったりしています。あ、もちろん難しい問題は、そもそもJavaですら書けないのでやってません。Paizaで言うところのD,C,B問題、AtCoderの「AtCoder Beginner Contest」のA,B問題あたりをやっています。 この「コード」 結論から言えば、このブログのタイトルの「コード」とは、標準入力を受け取る一連の処理のことです。このブログを額に見立てて最後に飾っておきましょう。 勉強を始めてから昨日までは「fmt.Scan(&n)」で何も問題がなかったのですが、今日解いた競プロの問題では使えなかったのですよね。短い文字列であれば問題なくて、長いと不具合が生じるのではないかと、私は思ったりしました。これを解決するために、いろいろネットの海をさまよって、それっぽいコードを見つけてきました。しかし、意外とこのコードが複雑で理解に少し時間がかかってしまいました。 そもそも、標準入力から文字列を受け取るというのは競プロの問題では初歩の初歩といいますか、前提条件、出来ないやつは提出することを許さず、的なものです。したがって、この理解したものを消してしまうと、次に書く時に覚えていられる不安になりました。そういうわけで、この初心者コードを貼り付けておきたいと思うに至ったわけです。 package main import ( “bufio” “fmt” “os” “strconv” ) func main()… Continue reading この「コード」を額に入れて飾りたい
フォンスティ音楽教室① 音楽史の話をしようとしましたが楽器分類法の話
皆様お久しぶりです!!世界史べーた(仮)様のOP曲、アイキャッチ効果音、及び音楽史動画を主に制作しているスティーヴです!!ブログを書くのも本当に久しぶりですね……。その間に新しく入会される方もいれば、去られた方もおり……時の流れ、そしてそれが過ぎ去る速さを直に感じておりました……。 前までは私がキングダムなりアド・アストラなり好きな歴史漫画について語っていたのですが、せっかく私も本格的にべーた様の音楽要員として活動を開始したので、今回からはフォンスティーヴのクラシック教室と題し、この私スティーヴがとにかくクラシック音楽、そして世界の様々な作曲家、音楽史について語ろうと思います!!Youtubeの方で投稿されている音楽史動画のこぼれ話をするかもですし、行き当たりばったりなのでちょくちょく話が脱線すると思います……どうか温かい目で見守ってください……ちなみに次回は未定です!! さて、じゃあまずはベートーヴェンの話でもしますか、ベートーヴェンが生まれたのは1770年、日本ですと明和7年、江戸時代です。そもそも日本って元から独自の音楽文化を持っていたんですよね。卑弥呼について記されたことで有名な「魏志倭人伝」には、邪馬台国内では葬儀で歌舞をしていたと言う記述があります。また、日本書紀には第14代天皇の仲哀天皇が琴を弾奏していたと言う記述があるそうです。 「琴」という楽器は未だに謎が多くてですねぇ……。古代の日本では呪術に使われていたという噂もあります……。一応「琴」という楽器は弦を使って音を出すので「弦楽器」という分類に入るのですが、ヴァイオリンと琴が兄弟、仲間ってのは少し無理がありますよね笑 弦楽器にはヴァイオリンのように弦をこすって音を出す擦弦楽器、ギターのように弦をはじいて音を出す撥弦楽器、ピアノのような弦を叩いて音を出す打弦楽器(弦打楽器)の、主に三つの種類があります(古代祭りの時の動画で話したっけな……。)。あと古代祭りの動画ではオーケストラで使われる楽器は主に「弦・打・吹」の三つに分かれると言ったと思うんですけど、実はそれよりももっと細かい分類があります(このままだと例外が結構ありますしね)。その分類はドイツの音楽学者である「クルト・ザックス(1881-1959)」とオーストリアの民族音楽学者「エリッヒ・モーリツ・フォン・ホルンボステル(1887-1935)」の2人によって20世紀初頭に作られました。この分類法は2人の名前からとって「ザックス=ホルンボステル分類」と呼ばれています。 ザックスホルンテス分類(以下HS分類)では、楽器は「体・膜・弦・気」の4つの属性に分けられています。現代ではそこに新しく「電」というものが加わったので厳密には5種類ですが、電は少しイレギュラーなケースなので4+1種類と言った方がいいですね。例外はなく、この世にある楽器は全てこの4+1属性がベースとなっています。では体・膜・弦・気とはどういう意味なのか。結論から言いますと、これの鍵は「発音原理」です。 「体」は「体鳴楽器」の略。楽器そのものが発音体となっているケースです。具体的な例ですと「シンバル」や「カスタネット」など。息や弦を必要とせず、楽器をぶっ叩いてそのまま音を出すことができますよね。じゃあ「体は打楽器のことなの?」と言われたらそうでもありません。あとで説明しますが「ティンパニ」や「タンバリン」は膜属性に分類されます。また、「オルゴール」もこの体属性に分類され、ワイングラスやコップに水をはってその縁を湿った指でなぞることで音を出す楽器かどうかすらも怪しい「グラスハープ」もこの体属性に分類されます。例えば、黒板を爪で引っ掻いて「キィィィィィィ!」という音を出すアレは、引っ掻くことで黒板そのものが発音体となっているので体属性に分類されます(どちらかと言えば雑音ですが……笑)。実はそれだけではなく、体属性の中でも、奏法や作りによってさらに細かい分類がされます。例えば細かい音程があるもの、それだけでメロディーを演奏することができるものは「旋律体鳴楽器」、できないものは「非旋律体鳴楽器」と呼ばれたり、それとは別にグラスハープのように擦って音を出すんだったら「擦奏体鳴楽器」、それよりもシンバルのように直接的な方法で音を出す場合は「打奏体鳴楽器」と言われたりします(そしてさらにその中で細かい分類があったり(T_T)……。)。ですが四属性より先の分類に関しては学者や国によって大きく解釈や名称、方法が変わってしまうのであんまり気にしすぎずに聞いてください笑。 「膜」は「膜鳴楽器」の略で、まぁ日本で使われている太鼓は大体これだと思ってもらって大丈夫だと思います。名前の通り木の筒や枠などに薄い皮や紙でできた「膜」をはることで体鳴楽器とはまた違う形の振動を起こします。まぁこれにももっと細かい分類はありますが、他の3つに比べたら簡単だと思います(多分)。ドラムセットで使われるスネアやキックも膜属性が大半だと思います。 「弦(やっとここまできた……)」は、まぁイメージの通り弦鳴楽器です。弦を発音体として振動を起こして音を出す、まぁほぼ弦楽器ですね。さて、最初の琴とヴァイオリンの話に戻りますけど、弦属性って少し特殊でして、ザックスの分類法によるとまぁまず弦属性は四つに分かれるそうです。それぞれ「ツィター」「ハープ」「リュート」「リラ」。 「何度も言うんですけど、この話はマジで諸説がありまくりんなので私のこの話だけでなく、自分の納得できる答えを探してください。無責任ですんません!!!」 まず結論から言いますと、まず琴は「ツィター属」に入ります。ですが、ヴァイオリンは「リュート属」に入るんですね。あと、ピアノも実は「ツィター属」です。なのでどちらかと言えばピアノはヴァイオリンよりも琴の方が仕組みは近いんですねぇ……。 いや、ほんとにここの分類はマジでめんどくさいです。 まずツィター属なんですけど、”主には”共鳴体とされる筒なり箱なりに弦をはったものを指します。なので琴はこれに属します。 「あれ?でもヴァイオリンもそれに近くない?」 そう思った方もいると思います。わかります。ではリュート属ってなんなのかと言いますと、ネックがついているタイプの弦楽器です。ネックがついていたら何ができるのかと言いますと、演奏しながらネックを指で押さえて弦の長さを調整することができるんですね。そこが大きな違いです。ギターもリュート属に入ります。もちろんヴァイオリンも。 はい、この分類法で一番めんどくさくなってくるのが我らがピアノくんです。先ほどは琴とピアノはかなり近い位置にいると言いましたが 「琴とピアノが兄弟?そんな分けねぇだろ!!」 と、そう思いますよね、ご安心ください。私もそう思ってます!!! この話の中で一番大事になってくるのは楽器の構造、そして発音原理です。ピアノという楽器はかつて「チェンバロ」という楽器でした。音は今と比べればギターに近い音で、仕組みとしてはピアノとさほど変わりません。ですが、実はそのチェンバロの前身のような楽器も存在していました。「ツィンバロン」という楽器です。ピアノのご先祖様のようなものですね。 ピアノとツィンバロンの一番の違いは鍵盤の有無です。ツィンバロンには鍵盤がありません。じゃあどうやって音を出していたのでしょうか……? 実際に画像を調べてみてもらったらわかると思うのですが、ツィンバロンはピアノの面影はあるものの、弦は剥き出しになっていて、鍵盤を介さず直接指で弾く、もしくはバチのようなもので叩くという方式をとっており、またその構造はツィター属の定義である「共鳴体に平行に弦をはる(琴をイメージしてもらったらわかりやすいかと)」というのに当てはまっています。そしてそのツィンバロンに鍵盤をつけ弦を直接叩く作業を簡略化したのがチェンバロ、さらにそのチェンバロを改良したものがピアノですので、発音原理的にはピアノはツィター、そして琴と同じなんですね笑。 さて、本当はね、気と電の話をした後に日本音楽史の話に戻ってベートーヴェンの話もしたかったんですけどね……。 意外にも筆が乗ってしまってブログの癖に星新一のショートショートぐらいの分量になってしまいました……。 めっちゃ中途半端なところだと思うんですけど、一旦、一旦今回はここで終わろうと思いますッ……。 いやマジですいません、私もここまで話が広がってしまうとは思ってなかった……。 次回は「楽器分類法後編」「日本の独自の音楽文化」「ベートーヴェンこぼれ話」 の三本でお送りします。お楽しみに!!
ヤンデレの道真好きに徹底的に恨まれて眠れない防府天満宮縁起
道真以外道真じゃないの こんにちは、※(米印)です。 ひょっとしたらご存じの方もいるかもしれませんが、実は私、菅原道真が大好きなんです。 それはもう、世界史べーた(仮)で最初に出した動画がこれですもの。 (ただ、一応免罪符として置いておきますが、私はあくまで「好き」なだけで専門家とかではありません。その点は十分ご注意ください) この漢詩……道真のじゃないよね。誰の? さて、そこで問題になるのが海鳥さんのこのブログ記事です。海鳥さんは旅行に際して防府天満宮を訪問されたようでして、その由緒などを載せています。まだ読んでいないという方はぜひぜひ。 天満宮の参拝者が増えるのはいち道真ファンとしてとっても嬉しいことで、去年のくないさんの太宰府天満宮訪問を聞いたときと同じく踊り狂いました。 ところが、落ち着いて肩で息をしながら改めて記事を読んでみますと、そこにはこんな文がありました。 「此地未だ帝土を離れず願わくは居をこの所に占めむ」 頬を冷や汗がつたいました。「これ、知らない」と。 言葉遣いや音の数からして、和歌ではなさそうです。それなら漢詩か、しかし見覚えがない。「菅家文草」や「菅家後集」に収録されている漢詩なら、見かけたことくらいはありそうなのに…… 瞬間、脳内に死ぬほど愛されて眠れなくなりそうなどこぞのヤンデレがインストールされ、「道真のこと世界で一番わかってるのは私なの! 他の誰でもない、私!」と叫び始めます。いやさすがにそれは思い上がりにもほどがある。ガチ研究者とかに勝つのは無理じゃん。そも専門家じゃないし。ただのファンですら私より上がいくらでもいるし…… ともあれ、脳内のヤンデレ妹(妹要素どこ?)をなだめるために、私はこの文について調べなければならなくなったのです。 道真は優しくてかっこよくて、でもちょっと脚色が多すぎるところはわかってた 最初に元文を確認してみましょう。防府天満宮さんのHPによりますと、「九州大宰府への西下の途中」に、「防府の勝間の浦に御着船」し、「『此地未だ帝土を離れず願わくは居をこの所に占めむ』」と願ったのだといいます。 つまり、昌泰の変により左遷された際のものと考えるべきでしょう。 あれ? 「御着船」なの? 陸路じゃなくて……? 早速雲行きが怪しくなっていますが、ともあれまずは一般のご家庭にある川口久雄校注『菅家文草 菅家後集』を引っ張り出してみます。 道真の左遷後ですから、もし収録されているとすれば年代的に『後集』しかあり得ません。 しかして、川口本を見る限り、昌泰四年(左遷はその年初)の最初の詩は「自詠」で、 離家三四月 とあるのですが、「離家」(=左遷)から数か月経っていると言っているわけで、これは時期的にも既に大宰府に着いてから詠まれたものと思われます。 実際、他の詩を見てもそれらしいものはありません。したがって、『後集』には載っていないことがはっきりしました。 次に確認すべきは『大鏡』です。大鏡も地味にいくつか漢詩を載せており、有名どころでは「一栄一落是春秋」(一応川口本も載せている)はこちらに引きます。 が、駄目……っ! やはりそれらしきものはナシ。念のため和歌も確認しましたがやはり無い。 ひとまず、脳内ヤンデレ妹は「やっぱり私の知らない詩……」と、お兄ちゃん(道真)の浮気を恨みつつも、自分の記憶違いではないことの安堵をわずかばかり含んだ声色に変わりました。よしよし。この調子で頼むぞ。 でも菅家伝さんって面白いっていうより信頼性がないよね 薄々察していたのですが、やはり『後集』や『大鏡』にはなかった。実はこの辺であのツイートをしています。ヤンデレ妹を必死に抑えながら。 となると、次に見るべきはおそらく菅家伝。なお、「菅家伝」というのは俗称でありまして、基本的には『北野天神御伝』というものがそう呼ばれます。 しかし、残念ながら私のような一般家庭にはそんなものは置いてありません。デカい図書館か逸般の誤家庭を訪ねて見せてもらうほかない。 ちょいと出かけまして、一番参照される(と思われる)真壁俊信校注の神道大系本(『北野』(神社編11))を用意しました。 さて、分厚い本をひっくり返してみた結果は……ない。ここにもない。念のため頭から後ろまで漢詩は全部チェックしたのにそれっぽいものがひとつもない。 脳内ヤンデレ妹はこんらんしている! いや、まぁこれも薄々気づいていたんですよ。防府天満宮の話なんだから防府天満宮の縁起読まなきゃ出てこないかもな~って。なので、読みます。読みました。 用意したのは『防府天満宮縁起集』、ここに『松崎天神縁起絵巻』の詞書が載っています。 で、パラパラめくって漢詩らしきものを探すと……ない、ない!? マジで? そんなの道真じゃない!! ヤンデレ妹がいまにも暴発しそうなのですが、なんとかKOOLになって考えます。 こういうときは元文に戻るのがセオリー。「此地未だ帝土を離れず願わくは居をこの所に占めむ」ともういっぺん睨めっこをしてみます。 にーらめっこしーましょ。わーらうっとまっけよ。 ……これ、ほんとに漢詩か?… Continue reading ヤンデレの道真好きに徹底的に恨まれて眠れない防府天満宮縁起
条約ができるまで
こんにちは。せるヴぁんだです。 今週のブログ担当、略してブロ担となりました。 皆さんは『条約』という単語をご存じですか? 世界には数えきれないくらいの条約が存在しています。 日本に関係する有名な条約だと、日米安保条約・ワシントン海軍軍縮条約などがありますね。(社会科の授業で聞いたことあるはず!) 時代を遡れば、いわゆる不平等条約と言われた日米修好通商条約なんかもあります。 たくさんある条約の種類 実は、『条約』と名がついているものだけが条約ではありません。タイトルの最後に必ずその文言を付けて『〇〇条約』とする必要はなく、名称は何でもよいのです。 条約と名がついていないからと言って、条約でないということにはなりません。 国際連合憲章 国際連盟規約 国際司法裁判所規程 いずれも『条約』という文言は入っていませんが、立派な条約なのです。 条約ができるまで 条約案の作成 まずは条約案を作らないといけません。 たくさんの国が加盟国となるような条約(多数国間条約)の場合、その成立にはそれなりの期間を必要とします。 例えば、国際連合が旗振り役となっている条約の場合、最初から国連の全加盟国が条約の作成に関わるというよりも、一部の国が作業部会といった委員会を立ち上げて条約の骨子を作成することのほうが多いように感じます。 失礼ですが、全権委任状はお持ちでない? 各国は『全権代表』と呼ばれる代表者を自国から派遣し、条約交渉に関わるプロセスの責任者とします。 昔は、全権委任状という書状を提示しなければ、全権代表であると認めらませんでした。 明治時代に岩倉使節団がヨーロッパへ条約改正交渉に赴いた際、全権委任状がなかったため改正交渉に参加させてもらえず、大久保利通と伊藤博文が慌てて日本まで取りに帰ってきたというエピソードが有名です。 条約案がまとまったら 出来上がった条約案は、条約作成会議の全出席国の間で採決にかけられます。 要は、あなたの国はこの条約内容に賛成ですか?反対ですか?という訳です。 原則は全出席国の同意がなければ、条約として採択されません。けれども、非常に多くの国が参加している場合、全会一致が難しいことも多くあります。 そのため、出席国の2/3以上の賛成があれば成立する場合もあったりします。 そうして賛成多数/全会一致で条約内容が認められると、晴れて採択となり、各国代表の署名によって内容が確定します。 署名したら終わり?もう帰っていい? 署名行為には「条約の内容を確定させる」という効果があります。しかし、条約が正式に『法的文書』として拘束力を持つには発効要件を満たす必要があります。 例えば10か国の署名が必要だとか、アメリカを含む20か国の批准が必要、といった具合ですね。 前者では、10か国が署名されすれば、条約は法的拘束力を持ちます(発効)。ところが、発効要件が後者のような場合、さらに批准という手続きを踏まねばならず、署名の段階では、極論『紙切れ』状態にすぎないのです。 さぁ閣下、これに批准にしてくださいね 批准とは、『国家として正式に条約に従う意思を表明する』ことと言われます。重要な条約のほとんどは、署名だけではなく批准手続きを要求しています。それはなぜでしょうか。 第一に、全権代表(署名をした人=国連大使等)が、その国の本来の条約締結権を持っている人(国家元首等)の意思に反していないか、与えられた権限を越えて署名していないか、ということを確認するためです。 第二に、条約締結権者に「やっぱりや~めた!」の機会を与えるためです。最初見たときはイイと思ってGOサインを出しちゃったけど、改めて考えてみるとダメだこれ!なんてことがあるかもしれません。署名から批准に至るまでに、もう一度熟考してくださいね、という意味も込められているのです。 第三に、民主的手続きのためです。言い換えれば、議会において本当に結んでよいか判断するためです。自衛隊の文民統制と同じような考え方で、条約の締結にも民主的な統制をはたらかせるべき、というものです。 日本国憲法では、条約の締結は内閣の仕事です。したがって、原則として議会は条約締結の手続きに関与しません。しかし、それでは条約の民主的な統制が効かず、内閣が好き勝手に条約を結びまくることができてしまいます。 そこで、次の3つの性格のいずれかに当てはまる条約については、締結(批准等)に際して国会の承認が必要な条約として国会に提出しなければならないとしています。 法律事項を含むもの 財政事項を含むもの 政治的に重要で、批准が発効要件となっているもの この考え方は、1974年当時、外務大臣だった大平正芳氏の答弁に基づくものであるため、『大平三原則』と呼ばれています。 批准しましたことをご報告申し上げます 最後に、批准した旨を寄託国と呼ばれる国に通知します。条約の発起国だったり、大きな国だったり様々です。国連事務総長が寄託者になることもあります。… Continue reading 条約ができるまで
誰でも読める! 今日から読める! 英語論文の読み方
論文を読もう! 急に何か知りたいことができたとき、皆さんならどうしますか? そりゃあ、まずは今この記事を見ているパソコンやスマホから検索するのだと思います。wikipediaとか見たりして。お手軽ですしね。 ただ、やや込み入った内容になったりすると、wikiちゃんだけでは物足りなくなってくるでしょう。そういうときには違う媒体に浮気する必要があります。 真っ先に思いつくのは書籍です。本にありついてしまえばこっちのもの。もうwikiちゃんのことなんて、末尾の参考文献くらいしか見なくなります。 とはいっても、本を読むためには図書館なり本屋なりに行かないといけません。お外怖い……花粉怖い…… ネットで注文して届くのを待つという手もありますが、いずれにしてもちょっと時間がかかります。 ああ、図書館の中に住めたら良いのに!! できれば国会図書館の中に! でも、その「図書館」が目の前の小さなハコに収まるような手段があったとしたら……? 一度外に出たら目の痛みと呼吸困難に襲われるこの最悪の季節でも、部屋の中から一歩たりとも出ずに、書籍と同じか、場合によってはそれよりも正確で充実した情報を無料で摂取できる方法が、あるとしたら…… それこそが論文です。 論文もお金かかるんじゃないの? と思うかもしれません。いいえ、そうでもないのです。近年はとくにオープンアクセス化が進んでおり、かなりの割合の論文は無料で読むことができます。 お目当ての論文を見つけた後は、たとえば、「Unpaywall」というgoogle chromeの拡張機能などを使えば、その論文のPDFを合法的にダウンロードできる方法を探してくれますよ。 さらに、もしもあなたが大学生や大学の教員、または研究機関の職員等である場合、論文ジャーナルと包括的な契約が結ばれている可能性が高く、有料で出版されている論文たちも読むことができるかもしれません。 論文はお手軽です。お金はかからない、本よりずっとページ数が少ない、しかも、だいたいは一つの決まった目的のために書かれているので、趣旨も理解しやすい。 「論文」なんて言うから小難しく感じるだけで、英語にすればだいたいはarticle「記事」かpaper「ペーパー」ですから、そんな大げさなものじゃあないのです。むしろ本よりずっと楽ですよ。 英語論文を読もう! さて、これでもう皆さんは論文を読もうという気概に満ち満ちていると思いますけれども、ついでにもう一つおすすめしたいことがあります。 それは英語の論文を読んでみないかということです。 英語。イングリッシュ。えげれすやあめりかという、はいからな国々で使われているらしいあの言語のことです。 「英語なんて読みたくないよ~~~大学入試でもう一生分読んだよ~~~」というそこのあなた。お気持ちはわかります。けれども、どちらかといえばこれは英語で読まなければならない、読まざるを得ないという話なのです。 とくに経済学では顕著なのですが、一流の研究はほとんどが英語です。今一番流行っている研究が、というだけでなく、これまでに積み重ねられてきた、研究の核になる重要な文献がみな英語なのです。 ほとんどの自然科学、社会科学、また歴史や地域研究であっても、よほど日本に密着している研究でもなければ、大抵の研究は英語です。 なんなら、私の高度経済成長(まさに日本史!)の動画ですら、参考文献を見ればLincolnさんの”Japan, Facing Economic Maturity”という本があります。 私たちは英語を避けては通れません。その分野を研究し続けようとすれば、いつかは英語文献に出会ってしまって、読むしかない状況に追い込まれてしまうのです。「わたし英語文献、いまあなたの後ろにいるの……」と。 英語論文、ざぁ~こ けれども、実は英語論文なんてなんにも怖くありません。雑魚ですよ雑魚。 大真面目な話、あなたが思っているよりも3000倍は楽勝です。「英語読むのやだな~」を乗り越えるのが一番難易度高いレベル。 この落差にはちゃんと理由があります。大きく分けて2つ、前提知識があることと、「数字」があることです。 大学入試や何かで英語に苦手意識のある方、ご安心ください。あれはむしろ大学入試の難易度がおかしいのです。 他言語の文章を読む際に大切なのは、文脈の理解と言葉の理解の両面です。試験でよくある長文読解の問題は、いきなり文脈も何もないで英語が羅列されるのですから、読めたもんじゃありません。単語から必死に文脈を推測するという、わけのわからない作業が要求されてしまいます。 一方、あなたが自分から英語論文を読もうとするなら、それはあなたが既に日本語の文献で既に知っている分野のものでしょう。前提知識、とりもなおさず文脈への理解が十全にあるのです。多少単語がわからないくらい、どうとでもなります。 それに、別に試験のような重箱の隅をキツツキのようにつつきまくるような問題を解く必要もありません。だいたいの意味がつかめれば勝ち。あとは気になったところだけしっかりと読めばもう120点です。 もう一つの理由なのですが、これはとくに経済学や理系分野では「数字」だけでなくアイツがいます。そう「数式」が。 日本語で学んでいる間、おそらく皆さんを散々苦しめたであろう数式。けれども、日本語だろうが英語だろうが、数式の書き方は何一つ変わりません。つまり、数式が理解できているなら、日本語であれ英語であれ、あるいはいっそもっと違う言語だとしても、同じように通用するのです。 散々戦ったライバルがいざというときに味方になる熱い展開です。もちろん、そういうゲームにありがちな、「味方になると弱い」なんてこともありません。むしろ、ある友人は数式だけ追っときゃ文章なんて読む必要ないと言い出すほど。……それは言い過ぎだと思いますけどね。 もちろん、文系分野でも、近年は統計やデータを用いた研究が増えています。こういった部分は、ただ数字が羅列されているだけですし、英語の能力がなくとも簡単に理解することができます。そして文脈がわかっていれば、データの意味もある程度推測がつくわけで。内容も「やっぱりそういうこと言いたいのよね」というように、すんなり入ってきます。 論文の読解テクニック ようやくこの記事の題名と関係しそうなところにやってきました。 さて、いざ英語論文を読む覚悟がついたとして、では頭から最後まで通して一気に……というのではちょっと大変です。私もやりません、そんなこと。 ならばどうするか、ちょっとしたテクニックを使います。… Continue reading 誰でも読める! 今日から読める! 英語論文の読み方